crazy-tamako’s blog

私のオウムになってください

私の生活を分析するための、備忘録。
収支状況の分析。メモ。たまに趣味と夢の話。

ポースケ(津村記久子)

2023/3冊目

※積み本

 

新卒一年目時代に、娯楽も友人もない土地でへとへとになりながら本屋で手に取ったのが、その年の芥川賞をとった津村記久子さんのポトスライムの舟でした。

 

そのときから津村記久子さんの作品は相性の良いスキンケア商品みたいだなと感じて、目に入ったら買うということをしていたんですけど、読書の優先順位を第一に挙げるまで積み本の高い山の一層でした。

 

 

ポトスライムの舟については、会社の人間として6年間働いた身としては思うことがありすぎて別で語る機会を設けたいと思いますが、とにかく、働く人間にとって、少なくとも当時の私にとっては、そうだよね。そういうもんだよね、っていういい意味での諦観を与えてくれた、ある意味、私の人生において大事な一冊です。

 

ということもあり、ポトスのその後なら読むしかと思って当時買ったんだろうな、と思って巻末をみたら、初版2018年でした。約5年、その年なのかな。積みすぎやろ。

 

ポースケ、すごく面白かったし、楽しかった。笑ったり、ほろりときたり、ひえっとなったり。もー人生って感じ。

歳をとるにつれて、いろいろ経験するにつれて、わかるなぁと思うことが増えてくる。

特に、ゆきえの話はとてもとてもタイムリーだったので、悪い意味でね、電車の中で司の手紙のシーンにぶち当たった時、びっくりしすぎて、顔を上げてそのまま本を閉じました。

おんなじようなことをする人がこの世にはやはり一定数いるんですね。

 

津村記久子さんは、悪いやつというか、攻撃する人間の描き方がすごくリアルで不快さを感じる。元カノのアパートに声かけるでもなく、ただじっと監視している様子、ぼんちゃんの存在を知ってからの司の手紙を投函するという行動、「いい距離感で向き合いたい。」の気持ち悪さ、向き合おうとすな…。なんでそんな歪んだ感情を抱きながら、人にぶつけられるエゴイズムが誕生すんねん、抱えても行動すな!大人やろ!!!!自己救済するなら、1人だけで上がれるよう努力しろよ…他人下げるのカッコ悪すぎやろ…なんで、わたしたちにこだわるの…わかる。無理!わかる…気持ち悪い…

攻撃された側の人間の受け流し方、受け止め方、傷つき方もそれぞれリアルで、傷つけられた人たちのそばにいる人たちも、それぞれの距離感だった。

 

個人的に、深い河では犀鳥とオウムの話がすごく好きだったので、個人的にケンイチくん?と冬美さん匠さん夫妻の話は印象的でした。

わたしも、誰にも言えないような話を聞いてくれるそんな相手が欲しいなと、朗読するのもすごくいいなと思った。誰にも言えない話なんてないんですけどね。

結局、冬美さんは、誰にも言えないような、でも言いたい気持ちをいつも抱えて過ごしているけど、咀嚼しながら忘れてったり、匠さんに話したりして、今回若本さんという人とも通じ合えて、そうやって少しずつ話していくのかなと思う。

あと、前職に匠さんという男性がいて、その人も小説書きそうだったから、匠さんイメージがよりリアルだった。

 

小説だけど、私たちの日常だった。

ヨシカは、死刑囚が食べた料理を、明日も生きようとする人たちに食べさせた。

私も、明日を生きようとする人間だ。

明日死にたくない、違うな、死んでないから明日を生きるしかない、そういう感じ。

ヨシカは「明日のことを考えていた。」っていう一文があったんですけど、そういうことだなと思うんですよね、毎日。

明日がある人間が、ご飯を食べる。それで、ずっといいんだよね。

 

私はあまり食に興味がない人間だから、正直食べ物は食べれるんだったらなんでもいい。

でも、人間の、共通した、セックスの次くらいに普遍的に密接に取れるコミュニケーションてやはりご飯を一緒に食べることやと思うから大事だなと感じる。

 

通勤時間の合間に気負わずに読めて、でも心に残る良い小説だった。

次は、三島由紀夫金閣寺を予定しています(怯)